内容証明は、どんな時に利用するのか
一般の人にとって、内容証明郵便が届くと、かなりビビりますよね。内容証明を打差し出す人にとっても、それなりのパワーとメンタルが必要になってくると思います。
内容証明とは
内容証明とは
郵便物の内容をである文書について、いつ、誰が、いかなる内容の文書を誰に送付したかを、日本郵便株式会社が証明してくれる制度です。
ここで証明してくれるのは、差出人、受取人、差出時期、記載内容、文書の存在であって、文書の内容の真実性は証明されませんので注意が必要です。
また、相手方に配達された事実も証明するには別途、配達証明というオプションをつけることが大事です。多くは、配達証明付きの内容証明で送ります。
配達証明を付けることによって、若干、値段は上がりますが、意思表示が到達された事実を立証することができます。
内容証明の目的
行政書士として相談を受けているとき、「内容証明で送ったほうがいいのですか?」とよく聞かれることがありますが、内容証明を利用する目的は大きく分けると、次の2つがあります。
①法的手続きの証拠として
なぜ、内容証明で送るかというと、意思表示や通知といったものは、後々に内容や日付が問題になることがあり、内容証明を利用する事によって、それらを証明する事が目的となります。そして、実際に裁判にまで発展した場合には、証拠資料として使うことになります。
②相手方に心理的プレッシャーをかける
もうひとつの目的は、相手にプレッシャーをかけるためです。やはり、一般の人にとっては、内容証明というのは心理的圧迫が強く、「もしかしたら裁判になるかもしれない」、企業にとっては「社会的信用が落ちるかもしれない」
そういった、心理的圧迫を利用して、裁判によらずに債務を履行してもらう為に、内容証明を利用することがあります。
内容証明を利用する具体的な場面
もっぱら、相手方にプレッシャーをかけるだけの目的の場合はともかくとして、ほとんどの場合、上記①の法的手続きの証拠として利用されます。以下に典型例を載せます。
1.時効の完成猶予のためにする催告(民法150条)
債権は、一定期間行使をしないと消滅してしまいます。
(典型例)
・個人間のお金の貸し借りなど(民法166条)
・不法行為による損害賠償請求(民法724条)
・遺留分侵害額請求(民法1048条)
など
そこで、時効が完成する前に内容証明で催告(民法150条1項)をすることによって、後から「催告を受けてない」という相手方の主張を封じることになります。口頭やメールでも催告の効果はありますが、確実な証拠とするために内容証明を使うのです。
なお、催告により6か月間は(時効完成の日が到来しても)時効の完成が猶予されますが、再度の催告では猶予されません。また、あくまでも猶予されるだけであって、催告後に裁判上の請求等(民法147条)を行わないと時効が完成してしまいます。
2.契約の解除通知
相手方が、債務を履行してくれないので契約を解除して、契約の拘束から離脱したいときは、まず相当期間を定めて催告を行い、その期間内に履行がないときは、契約の解除ができます(民法541条。履行不能の場合は除きます(民法542条参照))。
この相当期間は、それぞれの契約により個別に判断されますが、7日~14日程度だとよく言われております。
他には、特定商取引法などの各種法令によるクーリングオフをする場合、原則、期間制限があります。
そこで、催告から相当期間が経過した事、法定期間内にクーリングオフの意思表示をしたことを証明するために内容証明を使います。
遺留分侵害額請求も、この期間制限をきちんと守ってますよ、という事を証明するためです。
以上、1と2は日付が重要な意味を持つ場合の典型例です。いつ出したか、という事の証拠として使います。
3.確定日付による通知が必要な場面
債権譲渡の第三者対抗要件が典型例です。
債権の譲渡は、譲渡人から債務者への通知、または債務者がした承諾を確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗(主張が通ること)できないことになっています(民法467条1項2項)。
確定日付のある証書とは、聞きなれない言葉ですが、典型例が内容証明のことです。
条文上は、債務者へは内容証明を使わなくても(たとえば口頭でも)、債務者には対抗できますが、通常は内容証明を使います。
第三者への対抗は、最初から条文上の要件となっています。
4.権利義務の変更・消滅
例としてよく挙げらるのが、相殺の意思表示による債務の消滅(民法505条)や、土地や建物の賃貸契約における更新拒絶や契約解除などがあります。
これらは、日付というより、きちんと事実として残しておきたい、あとで争いになったときのために使います。
他には、債務者が消滅時効を援用するときなんかも、この目的で使われます。
内容証明には内容証明で?
もし、自分に内容証明が届いたら、こちらも内容証明で回答しなけらばならないのでしょうか?
現役の弁護士の先生から聞いたことがあるのですが、内容証明を出した相手方の代理人弁護士から内容証明が届くことがあるけど、意味が分からない…と思うことも、あるそうです。
内容証明の目的は、上記の目的であって、これらの目的がないのであれば、なんでもかんでも内容証明…というのはちょっと疑問ということです。
内容証明を出すという事は、宣戦布告であり、今後、紛争状態になる可能性があるので、法的手続きの面で考えると上記の理由以外では、あまり意味がないのかな…だそうです。
上記の例、たとえば、代金の請求の内容証明に対して、相殺の意思表示をや消滅時効の反論をするには、意味があるという事でしょうか。
いずれにしても、内容証明一発で相手が履行してくれて問題解決できたということも、もちろんありますが、内容証明というのは後戻りできない宣戦布告とい側面がありますので、出す側としては慎重になるべきです。
内容証明が届いて、こちらにも法的反論がある、こちらが出した内容証明に反論されたとなったときは、すでに紛争状態になっています。
そうなった際は弁護士のみができる領域となりますので、弁護士に相談するほうがよいでしょう。