自身のお悩みについて、まず最初にどの専門家に相談するのがベストでしょうか?

事例

【ケース1】相続が起こって、兄弟で揉めている。
【ケース2】2024年4月から不動産の相続登記が義務化されると聞いたが、はたして自分でできるだろうか?
【ケース3】亡くなった父親の銀行口座が凍結された。このままでは生活費を下せない。
【ケース4】相続税の対策をしたい。相続税の申告をしたい。
【ケース5】フリーランスで仕事を受注してきたが、クライアントから法人化してくれと言われている。
【ケース6】飲食店を開業したいが、どこかに許可や届出が必要なのか?
【ケース7】1人で会社を経営していたが、従業員を雇うことにした。なにか特別なことをしなければいけないのか?

士業には、業際といって業務範囲が、弁護士法、司法書士法、行政書士法などによって規定されています。
これが普通の感覚だと非常に分かりづらいんですよね…。
ただ、結論から言うと最初の相談は後述しますが、どこに相談してもさほど大差はありません。
(他士業と提携してるなど、紹介や引継ぎが可能な事務所という条件付き)
そこで、まず士業選びのポイントを各国家資格別に紹介します。

弁護士

まず、弁護士を選ぶ最大のポイントは、「既に揉め事が起きている」「恐らくこれから揉める」です。
弁護士法72条本文に、「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件…(略)…
代理、仲裁若しくは和解その他の…(略)…業とすることができない。」
とあります。

かいつまんで言うと、原則、弁護士以外はお金をもらって裁判で代理人になったり、裁判外でも和解交渉したりしてはいけませんよ。たとえ一回きりでも士業としてやってはいけませんよ。ということです。(弁護士法72条但書の「ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」の部分が、司法書士や行政書士や税理士などの国家資格ができる事です。)

例えば、上記の【ケース1】で遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所で遺産分割調停→審判という流れになります。調停・審判に至る前に弁護士を立てて交渉を一任することもできます。そうなると、おそらく相手側も弁護士を立てることになるでしょう。

このように、「既に揉め事が起きている」「恐らくこれから揉める」場合は、最初から弁護士に相談するのが得策と言えます。
なぜなら、司法書士や行政書士を最初の相談窓口にしても、揉めている事件となると上記弁護士法72条により、
代理交渉や裁判業務ができないため、結局、弁護士に引き継いだり、紹介したりします。弁護士以外の士業との契約書の多くに

(乙の辞任等)
第 〇条
以下の場合には、乙は、甲の承諾を得ずに辞任することができる。
①(略)
②紛争の可能性または紛争が生じたと判断される場合
③(略)

といった条項があるのは、そういった理由からです。

ひとつ考慮したいのが、弁護士費用は他士業と比べて高額と言われております。
また敷居も高く感じる方もいらっしゃるかもしれません。
特に揉めておらず、まとまった内容を書面にするだけなら、他士業に依頼して費用を安く済ませる、という事も多いようです。

司法書士

司法書士は登記申請のプロです。登記申請の代理人は司法書士の独占業務です。
一応、弁護士も行うことができますが、高度な専門性ゆえ、登記の申請は弁護士も司法書士に依頼することが多いようです。

では、登記とは何でしょうか?
登記には大きく分けて不動産登記と商業登記があり(登記には債権や動産もありますが、ここでは割愛します)、不動産を購入した事がある方、会社を設立したことがある方は、実は必ずといっていいほどお世話になってるはずです(住宅ローンだと銀行が、会社設立だと行政書士が最初の窓口になっていた場合、司法書士の顔があまり見えてきませんが)。

不動産登記は、2024年4月から施行される相続登記の義務化、2026年4月から施行される住所変更登記の義務化、新築・滅失他の表題登記といった一部を除いて、権利部の登記(分かりやすい例で言うと名義変更の登記)は実は義務ではありません。義務ではありませんので罰則もありません。
ただし、登記(例えば不動産の名義変更)をしないまま放置していると対抗力(民法177条)や効力(例:抵当権の順位変更など)が備わりませんので、最悪の場合、後々トラブルに発展してしまうおそれがあります。

商業登記は、会社法や各種法人の根拠法令により、登記義務が発生する事が多いです。登記義務を怠ると過料に処せられることがあります。

登記申請は司法書士に頼まず、ご自身で行うことは、もちろん可能ですが、これがなかなか大変です。
法務局に行って「申請書ください」と言っても、申請書は貰えません。そもそも、「様式(フォーマット)」が無いんです。申請は白紙に登記申請書というタイトルから自身で書いて(書面申請)、添付書類もホチキスやクリップ等で自分で添付して、なんの添付書類を何通添付した、まで書かなければなりません。当事務所での相談でも、自身でやったけど大変だったという声もよく聞きます。なかには5回も法務局に足を運んだという方もいらっしゃいました…。

ケース2】の相続登記や、【ケース5】の会社設立登記(会社は登記することにによって成立します(会社法49条))があるときには、最初から司法書士に相談すればワンストップで問題が解決できそうです。

その他には、相続放棄の申し立て、相続財産に不動産がある場合の遺産分割協議書作成、遺言書の検認申し立てなどもできます。

また、あくまでも個人的な感覚ですが、企業法務を専門にしている弁護士以外で会社法に1番詳しいのは司法書士なんではないかと思っています。

行政書士

行政書士の業務内容が一般の方にとって1番分かりにくいのではないでしょうか。
行政書士の業務内容は行政書士法に規定されています。根拠条文を見てみましょう。

(業務)
第1条の2 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(カッコ書き省略)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。

分かりづらいですね、、、
「官公署」とは国や地方公共団体、その他公の諸機関を言います。市役所、警察署、税務署などです。国の行政機関や司法機関なんかもそうです。
そして、これら官公署に提出する書類は1万点以上とも言われており、これが行政書士の仕事内容がイメージできない原因かと思われます。

比較的有名なものとして、建設業許可の申請や免許更新、外国人のビザや帰化申請は行政書士、というのが業界では通例のようです。

【ケース6】の飲食店の開業には、保健所から営業許可を取得する必要がありますし、深夜0時以降に酒類を提供するには、深夜における酒類提供飲食営業開始届出書を警察署に、お店の広さや、収容人数の多さによっては消防署に防火管理者選任届や消防計画書の作成・届出をしなければなりません。
その他には、開店を広告するティッシュを街頭で配布するには警察署長から道路使用許可を取得しなければなりません。
このように、行政書士業務のメインは「許認可」とよく言われたりします。
最近では、補助金申請やドローン飛行許可なんてのもあります。

続いて、その他権利義務又は事実証明に関する書類
これも分かりづらいですね。

例えば、今後多くなると予想されている相続業務、遺産分割協議書の作成や、遺言書作成、それに付随した戸籍収集、金融機関の口座の手続き【事例4】

定款作成などの会社設立サポート、議事録作成サポート、契約書や内容証明(文書内容によってはできない事あり)の作成、自動車の名義変更や車庫証明なんかも業務の範囲となっております。

ここで注意が必要なのは

司法書士などの他の士業にも共通して言える事ですが、例えば相続人間で「紛争状態、または紛争になるおそれがない事」が前提条件です。交渉等を行えるのは弁護士だけです。

あくまでも、「合意内容を書面にする」ことしかできません。「揉めている。揉めそうなときは弁護士」にです。

次に、登記申請の代理と登記申請の書き方の相談はできません。たとえ無料でもできません。したがって相続財産に不動産があるときは最初から司法書士に相談するのが得策かと思います(我々行政書士の立場からすると、依頼が減るので、ここまで正直に言うのも躊躇しましたが、相談者の方の手間を考えたらウソはつけませんでした、、、、ただ、司法書士と提携・連携している行政書士は多いので、ご自身で司法書士を探して選ぶという手間が省けることが多いようです)。

また相続税の申告や税務相談は税理士しかできません(厳密に言うと弁護士でもできる場合がありますが、ここでは割愛します)。これもたとえ無料でもできません。

ただ、行政書士、司法書士、税理士、弁護士は士業同志お互いに提携していることが多く、自身が別でわざわざ他の専門家を探す手間は少ないことが多いです(他士業との提携、紹介が可能という条件に限ります)。

許認可の申請、補助金申請代行、相続における相続人調査、相続財産調査、戸籍収集や銀行手続きといった面倒なことだけを行政書士に相談する、というのも良いでしょう(相続における銀行手続きは本当に面倒です、、、)。

税理士

税理士は、言わずと知れた税務のプロです。
会社を経営されてる方は税理士と顧問契約を結んでいる方も多いのではないでしょうか。
税務は高度な専門知識が求められますので、税理士には、3つの独占業務が認められています。

・税務書類の作成
・税務代理
・税務相談に応じること

税務書類とは、決算書類、確定申告書類などがあり、代理とは申告や納付をすることです。
「税務相談に応じること」はたとえ無料でも無資格者が行ってはいけません。

税務相談の「相談に応じる」とは、「具体的な質問に対して答弁し、指示し又は意見を表明することをいうものとする」とされています。
「一般的な説明だけなら税務相談にあたらない」という解釈が通説的見解と言われています。
しかし、「具体的な質問に対して答弁し、指示し又は意見を表明すること」
に該当するか判断が難しいケースもあります。他士業やコンサルティング会社が実際に計算機を叩いて、
「あなたの税金はこれだけかかりますよ。」と質問に対して具体的に回答してきたら要注意です。
もし税理士登録していない(法)人であったら、その人に正式に依頼するのはよく調べてからにしたほうがいいかもしれません。
遵法意識のない専門家との付き合いは、いつかはトラブルに巻き込まれる可能性があると個人的に思います、、、、。

尚、特殊な例として、レアケースではありますが

①ゴルフ場利用税
②自動車税
③軽自動車税
④自動車取得税
⑤事業所税

については、行政書士が書類作成を行うことができます。(税理士法第51条の2)

最後に、ひとつ考慮しておきたいのが、相続税に関しては相続案件が得意な税理士事務所に相談したほうがよいでしょう。
事務所によっては、相続をあまり扱っていなかったり、得意としていない事務所もあるようです。
相続税は、数次相続まで考慮した相続税対策や特例などを利用することによって、納税額が大きく違ってくることもあります。その後の相続税申告も自身で行うのは至難の業です。

ちなみに相続税は誰しもが発生するわけではなく、令和3年分の相続税の課税割合は全国平均で9.3%でした(1位は東京都の18.1%)。

その他、会社設立後などに必要な届出として、「法人設立届出書」、「青色申告の承認申請書」、「給与支払事務所等の開設届出書」の作成は、「税務官公署」に対する「申告等」につき代理代行を行うこと(「税務代理」、税理士法第2条第1項第1号)に該当するため税理士業務となっております。

社会保険労務士

社会保険労務士(社労士)は職場と人事に関わるスペシャリストです。
採用から退職にいたるまで労務管理や社会保険に関する課題を解決してくれます。また、労働や公的年金の分野で唯一の国家資格となっております。

【ケース7】1人で会社を経営していたが、事業が順調で従業員を雇うことにしたとします。全て1人で仕事をしていたが、従業員を雇うことによって普段の仕事がラクになると思いきや…
当事務所のクライアントには、最初は一人で始めたイベント運営会社、フリーランスや過去にフリーランスだった方が多いのですが
社員を雇ったことにより、社会保険、雇用保険といった手続きから給与計算まで本来の業務以外のことで時間を割くことになってしまい通常の業務に支障をきたすほど、事務作業が多くて大変になった、という声を聞くことも少なくありません。

他には、就業規則が法律にきちんと基づいている内容かどうか、社労士は労務のプロなので法改正にも敏感です。自分では気づかないこともアドバイスをしてくれるでしょう。
ちなみに従業員が10人以上となると、労基署に就業規則を提出する義務がありますが、この就業規則の作成代行は社労士のみできます。

社労士も他の士業同様、業際問題があり、できる事とできない事があります。特に税理士の業務と非常に似ていて、一般の方からすれば分かりにくくなっています。

しかし、税理士と社労士は提携していたり、繋がりが比較的多いようです。
そのため、士業間で連携や引継ぎがなされることがありますので、他士業との提携、紹介が可能という条件に限りますが、最初の相談に関しては他士業同様どちらに相談しても、結果的に手間はそんなに違わないかと思います。